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2020年4月14日 (火)

『流行性感冒〜「スペイン風邪」大流行の記録』

内務省衛生局編,平凡社,東洋文庫778の上記の本が,

今月末までに復刻されるらしいとの川瀬さんの情報です。

ぜひ購入して読んでみたいと思いました。

 https://www.heibonsha.co.jp/files/tybk0778ss(1).pdf

上記のところからダウンロードもできるらしいですが,

ページを見たら400ページ以上らしいの で,本にします。

Img_6682

検索したら,読んだ方の文章がアップされていました。

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 実に貴重な報告書が復刊されていることを知った。『流行性感冒――「スペイン風邪」大流行の記録 』(東洋文庫)。約100年前、世界で数千万人の命を奪ったというスペイン風邪について、直後に日本国内での被害状況や対応を総括した公的文書だ。内務省衛生局の作成。2008年に平凡社の「東洋文庫」に収められている。改めて手に取り、味読する価値が十二分にあると感じた。

 

日本では38万人が死亡

 

 本書の原本は大正11(1922)年の刊行。冒頭に「内務省衛生局」による「巻頭言」が掲載されている。当時の苦労ぶりがわかるので再録しよう。

 

 「全世界を風靡したる流行性感冒は大正七年秋季以来本邦に波及し爾来大正十年の春季に亘り継続的に三回の流行を来し総計約二千三百八十余万人の患者と約三十八万八千余人の死者とを出し疫学上稀に見るの惨状を呈したり。

 当局は毎次の流行に対し常に学術上の知見と防疫上の経験とに鑑み最善の施設を行ひ之が予防に努め或は防疫官を海外に派遣して欧米に於ける本病予防上に関する施設の実況を視察せしめ又特に職員を置きて専ら予防方法の調査に従事せしめ一面又学者及実地家の意見を徴する等本病予防上苟(いやしく)も遺漏なからんことを期したり。

 惟(おも)ふに本病の予防方法は尚今後における学術的研究に待つの要あるべしと雖(いえども)今次流行の際に於ける施設は又以て今後の参考資料と為すに足るものあるべきを信ず」

 

 ここから読み取れるのは、スペイン風邪は1918年から21年にかけて日本で3回流行し、いろいろな対策をしたが、合わせて2380万人あまりが罹患し、約38万人が死亡、「稀に見る惨状」を呈したこと、予防方法は今後の研究を待つしかないが、今回のさまざまな対処結果が先々の参考になるであろうこと、などだ。3年という長いスパンの中で波状的に襲来するスペイン風邪に翻弄され、内務省衛生局の担当者としても対応に苦しんだ様子が浮かび上がる。

 

すでに「インフルエンザ・パンデミー」の文言

 

 本編は以下の構成になっている。

 

 第一章 海外諸国に於ける既往の流行概況

 第二章 我邦に於ける既往の流行概況

 第三章 海外諸国に於ける今次の流行状況並予防措置

 第四章 我邦に於ける今次の流行状況

 第五章 我邦に於ける予防並救療施設

 第六章 流行性感冒の病原、病理、症候、治療、予防

 第七章 英吉利及北米合衆国に於ける流行状況並予防方法の概要(省略)

 第八章 我邦に於ける流行性感冒に関する諸表

 

 一、二章では内外の過去の流行病について中世までさかのぼり、非常に詳細な年表が掲載されている。各流行病の病状や被害状況も克明だ。三章では「今次のスパニッシュ・インフルエンザ」の流行について記され、すでに「インフルエンザ・パンデミー」という文言も登場する。各国への拡散・被害状況、対応なども極めて緻密に時系列を追って記されている。

 

 特に多くのページが割かれているのが「第六章」だ。「流行性感冒の病原」「流行性感冒の病理解剖」「流行性感冒の症候」「流行性感冒の治療」「流行性感冒の予防」という五節に分けて詳述されている。「病原」に関しては、「各国に於ける研究成績」などが報告され、「解剖」では「諸臓器の変化」などが掲載されている。「症候」では、「一般経過」「熱の経過」「各臓器に於ける徴候及び合併症」が記されている。「治療」では「対症療法」「特殊療法」「看護上の注意」が並ぶ。100年前、保健衛生の担当者たちが、未知の病だった「インフルエンザ」というものにどう立ち向かい、核心に迫ろうとしていたか、その苦労と意気込みがひしひしと伝わってくる。

 

患者の咳は十尺先まで飛ぶ

 

 この中で一般読者にも関心があるのは「予防」だろう。すでに「飛沫の拡散」や「マスク」について細かく記されている。海外の研究成果や使用例、実験結果なども参考に概略以下のようなことが出ている。

 

 ・粗製並製の「ガーゼ」のマスクは防御効果なし。

 ・談話の際に菌は四尺先まで飛んでいる。患者周囲の危険界は四尺。

 ・咳嗽(咳、くしゃみ)では十尺先まで飛ぶ。咳嗽患者周囲の危険界は最短十尺。

 ・マスクを使用することで、他の伝染経路(手の汚れ、不衛生な食物)をなおざりにする傾向がある。

 ・内輪の集まり(会社の事務室、友人間の社交的な会合等)ではマスクを取り外す者が多い。

 

 ガーゼへの吹き付け実験結果も出ている。ガーゼ2枚だけだと、菌が2680個残った。8枚でも850個。ガーゼ2枚に脱脂綿一枚だと191個に減った。今後使用するマスク素材について、素材ごとの一平方インチ当たりの繊維数についても細かく定めている。使用繊維数に応じて、「病人用」「非病者のみの着用の場合」などの区分けもされている。当時の科学で解明できた事実をもとに、より精度の高い防衛策を試みようとしていたことがわかる。巻末には各県の罹患者、死者の一覧も掲載されている。職業別もある。

 

現在でも「使える」資料

 

 本書は原著刊行から長い時間が過ぎて、幻の書となっていたという。それをウイルス学者の西村秀一さんが古書店で入手、東洋文庫での復刊にこぎつけたのだという。「解説」で西村さんが本書の画期性をまとめている。一部を紹介しよう。

 

 「これといった有効な武器をほとんど持たず、それでもこの流行の拡がりを少しでも食い止めようと、その持てる資源と英知でこの流行に立ち向かった当時の人びとの軌跡を具体的に知ることができる」

 「本書は、近代史資料としての価値はもちろんだが、解説者のような感染症関連の仕事をする者にとっての実用的価値も大きい。大規模な感染症の流行、とりわけ近年とりざたされている新たなインフルエンザ・パンデミックに備えようとしている人たちにとって極めて示唆深いものが含まれており、単なる懐古的骨董趣味的な使い方を超えた、『使える』資料である」

 

 この解説にもあるように、今回の新型コロナウイルス関係者にとっても大いに参考になることだろう。流行が終息したら、本書を参考に報告書が作成されるかもしれない。100年前の先輩たちのように、世間に公開してもらいたいものだ。

 

 本書は、版元サイトをみると、品切れ・重版未定のようだ。ネットの古書相場では超高値の取引になっている。

 

 BOOKウォッチでは関連で『インフルエンザ・ハンター ウイルスの秘密解明への100年』(岩波書店)、『猛威をふるう「ウイルス・感染症」にどう立ち向かうのか』(ミネルヴァ書房)、『陸軍登戸研究所〈秘密戦〉の世界――風船爆弾・生物兵器・偽札を探る』(明治大学出版会)、『感染症の世界史』(角川ソフィア文庫)、『ウイルスは悪者か』(亜紀書房)など多数を紹介している。

 

 

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