« 懐かしい教科書 | トップページ | 「いつもカルタはバッグに入れてありますよ!」 »

2017年2月28日 (火)

歴史を学ぶ中学生のために(再録)

本日は,出授業のクラスとの「最後の授業」である。
5年前に書いた文章を,再び贈ろうと思っている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

歴史を学ぶことは,人類の過去の成功例と失敗例を学ぶことであり,
同時に未来をどう創っていくかのヒントを得ることでもあります。
大変意義のある勉強と言えるでしょう。

しかし,歴史は注意して学ばないと,「その歴史を書いた人の主張を
そのまま受け入れてしまう」ということにもなりかねない面があります。
そこで,歴史を学ぼうとするあなたにぜひ覚えてほしいことを
いくつか書いてみることにしました。

(1) 歴史は「勝者の歴史」であることがほとんどである

歴史は誰によって書かれるかというと,「勝者」によっての場合がほとんどです。
「敗者の歴史」は歪(ゆが)められたり,消されたりすることがあるのです。
例えば,ひどい乱暴者の王が描かれたあとで,
「だから私たちは彼をやっつけたのだ」などと書いてあることは,
歴史書にはよく出てくる表現です。
しかし,本当にその王が乱暴者だったのかは「死人に口なし」ですから,
実際のことはわかりません。ただ,これだけは言えるでしょう。
「歴史の著述者は,そう信じてもらいたい」のだということです。
たとえば,日本の古代史で蘇我馬子や蘇我蝦夷,蘇我入鹿の名前には
動物が入れられていますが,明らかに「人間以下のもの」
という意識が働くように細工されているように考えられます。
元の字はきっと「いい意味」の漢字が使われていたに違いないのです。
それをわざと「卑しい字」を使って悪い印象を与えようとしているのです。
なぜかといえば,蘇我氏を倒した中大兄皇子と中臣鎌足の側の歴史が
そのようなイメージを描かせたかったからだということだと思います。
さらに,和気清(きよ)麻呂が道鏡に「和気穢(きたな)麻呂」と
改名されてしまうなどという話なども大変わかりやすい例です。

(2) 「普通のできごと」は記録されないのが普通である

私たちは日記に「昨日はごはんを食べた」「今日もごはんを食べた」
「明日もごはんを食べるだろう」なとどは書きません。
それはあまりに当たり前のことで「残しておこう」と思わないからです。
もし書く気持ちになるとすれば,それは異常事態の時で,
「昨日はごはんを食べられなかった」「今日もごはんを食べられなかった」
「明日はごはんを食べられるだろうか」というような時です。
だから,「江戸時代の農民はあわやひえばかり食べていた」
「米を食べることはできなかった」などと書いてあるとしたら,
やはり異常事態の時と考えるべきなのです。
もちろん江戸時代の農民がつらい思いをしたことはたくさんあったでしょう。
冷害や干ばつで米が採れないのに重い年貢を課せられていたり,
せっかく生まれた赤ちゃんを口減らしのために
間引いたこともしばしばだったと思われます。
しかし,物質不滅の法則に従えば,江戸時代の農民も平均的には
米の飯を食べていると言わざるを得ないのです。
農作業は力仕事ですから,あわやひえ(小鳥のえさ)では体力が持ちません。
この件については,板倉聖宣著『歴史の見方考え方』(仮説社)を参照のこと。

(3) 本当の歴史を知ることはできるか

では,世の中に「勝者の歴史」があふれ,「普通のこと」が残らないとすれば,
どのようにして本当の歴史を学ぶことができるのでしょうか。
それにはいくつかの方法があります。

1つは,先ほど書いた板倉聖宣さんの取った方法で,
自然科学の法則や原理をもとにして歴史を検証していく方法です。
板倉さんは,仮説を立て史料を探していけば,
探していた史料は必ず発見できると言っています。
それは自然科学でいう「実験」のようなものと言ってもいいでしょう。

もう1つは,利害関係のない第三者(たとえば外国史料)の記述を優先して採用したり,
2つの歴史書(古事記と日本書紀など)を比較検討するという形の研究をすることです。
この方法で進んだ研究をしている人に古田武彦氏
(『「邪馬台国」はなかった』が代表作)がいるので,
彼に歴史研究法を学ぶのもいいでしょう。

「本当のこと」が知りたいとすれば,
それはあなたに素晴らしい歴史研究者の素質があるということです。
ぜひ自分に興味があることから始めて,
いっしょに歴史を研究していきましょう。
歴史の研究は,きっとあなたの人生に
ステキなうるおいを与えると思いますよ!(o^-^o)

« 懐かしい教科書 | トップページ | 「いつもカルタはバッグに入れてありますよ!」 »

「教育」カテゴリの記事

コメント

とてもいい文章ですね。わかりやすくて、内容も豊富で・・・

小泉さんへ
コメントありがとうございます。

板倉さんと古田さんに出会えたことで,たくさんのことを学ばせていただいています。
その恩返しの1つが,この文章ということになるのかもしれません。
まだまだ恩返しの10分の1もできていませんが・・・。

別のサイトで取り上げていただいたこともあって,
「自画(ブログ)自賛」という文章も書いたことがありました。
http://koesan21.cocolog-nifty.com/dream/2014/11/post-ab0a.html

肥さんへ

私の好きな映画に「ダヴィンチ・コード」があります。
でだし近くで、トム・ハンクスが演じるロバート・ラングドン教授が、
Interpretation of Symbols(表象の解釈)という講演をするシーンがあります。
そのなかで、つぎのような言葉を述べています(スーパーインポーズです)。

我々は過去を知ることにより
現在を理解できるのです

“真実だ”と信じることと
真実をどう見分けるか

私達のことを伝える歴史を
どう書き残せばいいのか

何世紀もの長きにわたって
歪めれれた歴史から
元の真実を掘り起こせるのか

今夜はその探求の旅です
(Tonight, this will be our quest.)

「ダヴィンチ・コード」のテーマはこれだと思います。
この「今夜(Tonight)」 は、我らには「毎日(Everyday)」なのでしょうね。

訂正です。

(誤)「歪めれれた歴史」⇒(正)「歪められた歴史」の書き誤りです。

山田さんへ
コメントありがとうございます。

〉 この「今夜(Tonight)」 は、我らには「毎日(Everyday)」なのでしょうね。

なるほど。もう1年あまりその旅は続けられてきました。
そしてこれからも,命ある限り続けられていくことでしょう。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 懐かしい教科書 | トップページ | 「いつもカルタはバッグに入れてありますよ!」 »

2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

最近のトラックバック

無料ブログはココログ