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2016年11月11日 (金)

教育論文への試み(8)

形式が設定できずに困っていたが,
求めよさらば与えられんと,
昨年同僚だったОさんにお願いしたところ,
瞬く間にご教示いただいた。
さすが,「神様,仏様,О様」と
私が信頼しただけのことはある。
(昨夜メールで川瀬さんからも
同様の情報をいただいた)

そこで一挙に「形式問題」は大躍進し,
あとは『日本歴史入門』の写真の挿入と,
文章の流れの工夫となった。
(これについても,jwaさんからアドバイスいただき,
仮説社のホームページから右クリックで
3つの授業書のコピーをさせていただいた)

一応ここまで来ましたという報告をしよう。

「ronbun.docx」をダウンロード

↓ 写真以外は,下の様な流れになっています。

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たのしくわかる社会科を求めて
 ~社会科における仮説実験授業の活用~
     所沢市立上山口中学校 肥沼孝治

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(1) 板倉聖宣氏と仮説実験授業の紹介

 仮説実験授業の提唱者である板倉聖宣氏は,
1930年に東京に生まれた(現在86歳)。
東京大学・博士課程を修了後,1959年に国立教育研究所に勤務。
 その後1995年の退職まで多種多様の研究に取り組んだが,
最も成果を上げたものの1つが仮説実験授業であった。
その中心は,自然科学の法則や原理を学ぶもので,
仮説を立てて実験で決着をつけるスタイルからそう呼ばれてきた
(今では《ばねと力》や《ものとその重さ》,《花と実》など,
数えきれないほどの自然科学の授業書が開発されている)。
もっとも,この授業の当初から社会の科学の方面でも,
それに近いことが可能であるとされ,
1981年には授業書《日本歴史入門》が開発され,
その年に大学を卒業した私がタイミングよく仮説実験授業に出会えたのは,
本当に教員として幸せなことであった。
 当初自然科学の授業書(授業を進めていくためのプリント)が中心であったが,
《日本歴史入門》以降は社会の科学の授業書の開発も進み,
今では,地理・歴史・公民という社会科の「背骨となる」授業書も開発されており,
実践が待たれている。
 私が今回紹介するのは,特に使用頻度の高かった
地理的分野の《世界の国ぐに》,歴史的分野の《日本歴史入門》,
公民的分野の《日本国憲法とその構成》である。
どれも生徒たちの授業評価が高く,ぜひ実施したい授業書である。

(2) 地理的分野における仮説実験授業の実践

中学に入学してきた生徒たちが初めて出会う仮説実験授業として,
私は授業書《世界の国ぐに》を利用している。
世界地理から教えるのがカリキュラムから言っても自然だし,
小学校ではほとんど社会科の教科書には登場してこなかったが,
生徒たちにとってとても興味を引くことにつながるからだ。
したがって,本論もそこから始めることにしたいと思う。

ア,メルカトル図法
イ,世界の国ぐにの面積(特に上位6位まで)
ウ,世界の人口(ベスト10)
エ,世界の国ぐにのGDP
オ,世界の1人当たりのGDP
カ,日本との貿易関係が多い国ぐに

これらの基本的な情報を,数時間で予想しながらたのしく学ぶ。
そして,この第1部の「いろいろな世界地図」が,世界地理の総論となり,
教科書で学習する際の大事な道案内的役割をする。

最近では,立体教材「GDPボックス」も併せて使うことで,
さらにその効果を高めることができたと思っている。
(国旗の面積が人口を表し,体積がGDP全体を,高さが1人当たりGDPを表すので,
黒板に貼っていくと,それがそのまま「世界の現状」を表すことになるのだ)


その様子は,『歴史地理教育』誌の2016年2月号掲載の
「仮説実験授業《世界の国ぐに》と立体教材「GDPボックス」」に書いたので,
参考にしていただければありがたい。
その中に載せた授業評価は以下のようであった。
(仮説実験授業では,その授業評価を
「たのしさ」と「わかりやすさ」の5段階評価で表すことがよく行われる)

「たのしさ」 ⑤113人 ④41人 ③12人 ②1人 ①0人
「わかりやすさ」 ⑤87人 ④64人 ③14人 ②2人 ①0人

生徒たちの感想のいくつかを載せてみる。

「世界の勉強をして,いろいろ世界のことがわかってうれしかったです。
もっといろいろな国の細かいところを知りたいです。社会が好きになりました。」(女子)
「本当の面積は,メルカトル図法で描かれた面積と違うことには驚きました。」(男子)
「《世界の国ぐに》のGDPや貿易のことがわかりやすくてよかった。クイズ形式で楽しかった。」(男子)
「一番《世界の国ぐに》で印象に残ったのは,やっぱり「GDPボックス」で,
楽しかったし,わかりやすかった。GDPボックスを全部黒板に貼ってもらった時の情景を思い出して,
今後の勉強に役立てたいと思いました。」(女子)               
「今まであまり興味がなかった世界の国ぐにのことを,もっと知りたいと思いました。
ありがとうございました。」(男子)

なお,付け加えると,この授業書《世界の国ぐに》は卒業した生徒たちにも役立っている。
高校生たちが母校訪問してくれる。その際,授業書の途中に出て来る
「人口の多い国の覚え方」が役立ったと報告してくれるのだ。
(人口トップ10を,節を付けて順番に覚えてしまう)
 中国やインド,米国などの人口が多いことは広く知られているが,
パキスタンやバングラデシュの人口がトップ10に入っていることを知っている高校1年生は,
やはり高校の地理の先生を驚かせるのである。

(3) 歴史的分野における仮説実験授業の実践

世界地理の「背骨になる授業書」が《世界の国ぐに》と《日本の都道府県》だとしたら,
日本歴史と世界史の「背骨になる授業書」は《日本歴史入門》や《世界史入門》である。
まず,《日本歴史入門》から話を進める。
 この授業書は,わが国で初めて(ということは世界で初めて)作成された歴史の授業書である。

歴史は1回きりの現象なので,法則というものは見出しにくいが,
江戸時代の前半と後半の時代の画期は18世紀初頭であるという「時代区分」や
食料と人口は大いに関係があるということを学ぶのは歴史の正しいイメージを持つことにつながる。
 私が仮説実験授業を初めて知ったのはこの授業書きからであり,
それだけに実施回数も多かった。
 最近高校のスクーリング版(堀江晴美案)が試作され,最後の実践はそれによって行った。
原版に変わらぬ高評価で,しかも時間数も減らすことができた。
 5クラスの授業評価の集計は,以下の通り。

【たのしさ】 ⑤ 62人 ④ 75人 ③ 20人 ② 0人 ① 2人
【わかりやすさ】 ⑤ 61人 ④ 62人 ③ 30人 ② 4人 ① 0人

【たのしさ】の①が2人いることが心に掛かるが,感想を見た限りでは③程度に思った。
小中学生は,その時間の授業評価を全体の授業評価として書くことがたまにある。
感想も全員に書いてもらったが,すでに返却してしまって残っておらず残念である。
私の記憶では,「人口の変化で歴史を見ていく時代区分の面白さ」や
「江戸時代の農民は何を主に食べていたのか?(正解は,米)」などへの驚きが
特にたくさん書かれていた。

次に,《世界史入門》を紹介しよう。
この授業書は,まだ全体が完成しているわけではないが,第1部については完成していて,
世界史上で「その時期に中心だった国」を現在から古代にたどっていくという方法で学ぶ。
中学・高校で世界史を学び損ねた大人が,復習的に学ぶことにも使えそうな内容で,
これも生徒たちに好評である。(授業評価と感想が残っていないのが,返す返す残念である)

また,4年ごとに行われるオリンピックの前年などには,
《オリンピックと平和》というミニ授業書もタイムリーでいいだろう。
(次回は,2020年の東京オリンピックなので,ぜひ実施したいところだ)
私も一度実施してみたが,高評価だった。
 4クラスの授業評価の集計は,以下の通り。

【たのしさ】 ⑤ 52人 ④ 63人 ③ 26人 ② 2人 ① 1人
【わかりやすさ】 ⑤ 67 ④ 57人 ③ 19人 ② 1人 ① 0人

(4) 公民的分野における仮説実験授業の実践

この分野で「背骨となる授業書」は,長い間《三権分立》というミニ授業書だけだった。
三権の長の「給料比べ」から入り,三権分立の趣旨が俸給にも影響していることを学ぶものだった。
2004年からこれに《日本国憲法とその構成》が加わった。
(以下の本に,2つの授業書が収録されている)

このミニ授業書は,これまでのものが板倉聖宣氏の作成だったのに対し,
竹田かずきさんというデザイナーの方の作られたもので,
日本国憲法について学んでいるうちに,その構想が思い浮かんだようだ。
ある仮説実験授業のサークルで発表されたのだが,
ちょうど私も同席していて,以降作成を応援した。
また,全体を見渡すグラフは私が作らせていただき,
幸いこの授業書のまとめの部分に採用していただいていた。
私にとっても思い出深い授業書である。

この授業プランが教育誌『たのしい授業』2004年7月号で発表されると,
すぐ翌月号に反響が表れ,その後は各地で社会科の授業や入門講座,
サークルなどで実施され,その明快さとシンプルさで高い評価を得ている。
 公民的分野の教科書では,憲法の部分的には学ぶのだが,
総論的な学習がやはり大切だったのだ。
「日本国憲法の構成」を知った生徒たちは,
「これで日本国憲法のことが分かった」と大いに意欲を燃やす。
もちろん,これで日本国憲法のことが全部わかったとは言えないのだけれど,
憲法学習について「意欲を引き出すのに成功している」ということは,確かに言えるであろう。
なお,その実践については,『歴史地理教育』誌の2005年5月号
「1時間もの授業プラン~仮説実験授業の実践に学んで」に書いた。
生徒たちの感想から。

・「日本国憲法のことなんて今までほとんど考えたこともなかったけど,
今日から少しずつ興味を持って行こうと思いました。
グラフにするといろいろなことがわかりやすく見えるなあ,と思いました。」(TM君)
・「けっこうわかりやすかったと思う。憲法の流れがよくわかった。」(Iさん)
・「たくさん憲法(の条文)はあるけど,その内の一個目が国民主権だとは知らなくて驚きました。
日本国憲法はすごいなあと思いました。」(T君)
・「クイズはよくよく考えれば簡単でした。わかりやすい流れでした。」(Оさん)
・「わかりやすくまとめてあるし,文も読みやすく,グラフもけっこうちゃんとまとめてあった。」(K君)

(5) おわりに~授業書の紹介も兼ねて

就職浪人の時に出会った仮説実験授業は、私の教員生活を一変させたと思う。
そして,私が出会った時期には自然科学が中心だった授業書も、
今では社会の科学の広い分野を扱えるようになってきている。
ここで,代表的で使いやすいものを、いくつか紹介しておこう。

世界地理・・・《世界の国ぐに》~中学社会の入門期に最適。面積・人口・GDP・貿易の基礎を学ぶ
《世界の国旗》~国旗を分類していくことにより,世界の人々や文化について学ぶ
日本地理・・・《日本の都道府県》~面積・人口・県庁所在地名が県名と同じか違うかで分かる
《沖縄》~日本の中で最も異質性の強い?沖縄という県を通して日本がどんな国かを学ぶ
世界歴史・・・《世界史入門》~「世界の中心であった国」を逆にたどっていくことによって歴史を学ぶ
《オリンピックと平和》~古代オリンピックは,いつどんな形で始まり,どう終わったか等を学ぶ
日本歴史・・・《日本歴史入門》~歴史における時代区分の大切さ。食料と人口との関係などを学ぶ 
《日本の戦争の歴史》~明治時代以降の戦争について考えることにより平和の大切さを学ぶ
政治経済・・・《三権分立》~三権の長の俸給を比べることにより,三権分立の意義を学ぶ
《日本国憲法とその構成》~日本国憲法をその構成から考えてみることによって学ぶ
《おかねと社会》~政府と民衆が「おかね」をめぐってどのような関係であったかを学ぶ

これらは仮説社という出版社から市販されている。(検索すると,ホームページがある)
授業で使用する限りは,自由に増し刷りできることになっている。
関心を持たれた方は,試しに授業にかけてみていただきたい。
(だいたいの授業書は,中学なら1~5時間で実施可能である)
きっと生徒たちと「たのしくわかる授業」が展開できると思う。
これは34年間仮説実験授業と関わってきた私自身の実感である。

【参考文献】

板倉聖宣『未来の科学教育』(国土社)
板倉聖宣『仮説実験授業のABC』(仮説社)
板倉聖宣『歴史の見方考え方』(仮説社)
小原茂巳『授業を楽しむ子どもたち』(仮説社)
月刊『たのしい授業』誌(仮説社)の創刊0~456号

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