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2007年2月13日 (火)

私にとっての『盗まれた神話』

中学歴史の教科書には,
「古事記」と「日本書紀」が並記してある。
ともに日本最古の歴史書として
仲良く並んでいるかのようである。

しかし,この両書は
どちらかを正史とすればどちらかが偽史となる
抜き差しならぬ関係の書なのであった。

その二書を比較研究して
古代の「政治地図」を明らかにしたのも
やはり古田武彦氏であった。
(『盗まれた神話』は,1975年朝日新聞社刊。
その後角川文庫。さらに朝日文庫)

まことに大雑把な書き方で申し訳ないが,
単純化して書くと次のようにことは進んだ。

【九州王朝】
今「日本書紀」に載せられている
「一書」や「日本旧記」などのような内容の歴史が,
最初の段階で九州王朝で作られていた。
ところが,7世紀後半に白村江の戦いで
九州王朝が滅亡。
そのためにそれらの内容が
近畿天皇家(大和勢力)の手に渡り,
彼らの発展史として「盗用」された。

【近畿天皇家】
いったん自己の発展史を「古事記」にまとめたが,
(推古天皇あたりまで)
白村江の戦い以降の九州王朝滅亡によって
「一書」や「日本旧記」を利用することが可能となり,
自己の発展史のバージョンアップを図るため
これを「盗用」をした。
こうして完成したのが「日本書紀」である。
この段階で「日本書紀」が正史となり,
「古事記」は陽の目をみることが出来ない
偽史に貶(おとし)められた。

『盗まれた神話』は,以下のような構成である。

第1章 謎にみちた二書
第2章 いわゆる戦後史学への批判
第3章 『記・紀』にみる九州王朝
第4章 蔽われた王朝発展史
第5章 「盗作」の史書

第6章 蜻蛉島とはどこか
第7章 天孫降臨地の解明
第8章 傍流が本流を制した
第9章 「皇系造作説」への疑い
第10章 神武東征は果たして架空か

第11章 侵略の大義名分
第12章 『記』と『紀』のあいだ
第13章 天照大神はどこにいたか
第14章 最古王朝の政治地図
結び 真実の面前にて

神話を無批判に使用した
戦前の歴史教育の反省から,
戦後神話は教科書から遠ざけられ
「扱わない」という扱いを受けるようになった。

確かに神話には
「下手に手を出すと火傷をする」
危険な面もないではない。
しかし,古田氏のような研究方法を
もってすれば,日本の古代の姿を
はっきりと映し出すことができるのである。
それを正当に評価できないのは
まったくもって残念なことである。

次回は,「古代史三部作」と並んで
人気のある「古代は輝いていたシリーズ」
について書きます。
(2/13)

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古田史学」カテゴリの記事

コメント

「盗まれた神話」も衝撃的な本でした。たしか古田氏がこの本で書いていたと思いますが、神話を後世の造作として排除する日本の歴史学・考古学のレベルは西洋のシュリーマン以前のレベルだということを明かにした本でした。シュリーマンはホメロスの古代叙事詩「イリアス」と「オデッセイア」に描かれた古代ギリシャ神話が真実の歴史を反映している事を、叙事詩の記述に基づいてトロイやミュケナイという古代都市遺蹟を発掘して証明した人です。神話は歴史的事実を反映している。これは20世紀の歴史学の基本的立場だ。日本の歴史学・考古学はこのレベルにまだ達していない。
 古田氏の論証は、ここでもまた古事記などを書き残した歴史家を信じ、その記述にそって歴史を復元し、それと現代の考古学的成果と照らし合わせて証明する手法を取りました。神武東征説話でナガスネヒコと彼らとの戦いの場である日下が、当時においては大阪湾が現在よりももっと奥に入り込んだ先の地点であり、復元された大阪の古代地形と説話が極めてよく対照していること、そして神武と彼の子孫が大和に侵入して次第に勢力を拡大していった過程と、銅鐸の分布が、神武が大和に侵入した時期以後に兵庫県と愛知県とを中心とする2つの分布地域に分裂し、その中間の大和地方が銅鐸の空白地域になっているという考古学的知見とあまりに照合すること。これらは神話が歴史的事実を反映していることを示す白眉だったと思います。
 僕が歴史に興味をもったきっかけは、岩波少年少女文学全集に掲載されていたシュリーマンの伝記を子どもの頃に読んだことでした。神話・説話が歴史的事実を反映している。これは衝撃的でした。だから子どものときから古事記は何度も読みました。でもこの神話・説話が見事に日本列島の歴史を、大和天皇家は九州天皇家の一分流でのちに本家を併呑したと言う歴史を反映しているとは、夢にも思いませんでした。シュリーマンを読んでいたのに、神話・説話を歴史とは切り離し、そのまま受容していただけだったのです。
 以後僕がさまざまな説話を読み、その中で平家物語に出会い(平家琵琶にも)、そこから歴史を復元しようと試みた最初の踏み出しを示してくれたのが、「盗まれた神話」でした。

川瀬さんへ

コメントまたまたありがとうございました。
これまで川瀬さんが歴史とりわけ平家物語(平家琵琶)になぜ取り組まれているのかよくわかりませんでしたが,子どもの頃からの体験がその背景にあることなどを教えていただき,なるほどと思いました。
別便のメールで9月9日に「合同のお稽古会」があると教えていただきました。ぜひ参加させていただきたいと思います。
また,「この本を読んで肥沼さんがどんなことを感じ、どう影響を受けたかを聞きたい」とのご注文。明日からの連載で生かしていけたらと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

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