『たの授』12月号の巻頭は,
板倉聖宣さんの「軍人たちの戦争と平和」
という論文だった。
もちろん教育誌である『たの授』に
軍人の話が登場するのは例外中の例外である。
この論文は海軍の軍人であった井上成美が
どういう生き方をした人だったかを明らかにして,
私たちが歴史からどのように学んでいけばよいかの
1つの例を示したものだった。
ぜひ実際に読んでみていただきたいが,
「その気」になってもらうために
この論文の小見出しを書き出しておこう。
(1) 科学史の失敗から学ぶ~天動説から地動説へ
(2) 侵略主義的だった敗戦前の日本人
(3) [問題1]開戦時(1941年)の閣僚たち全員はA級戦犯か
(4) [問題2]戦争中の軍部大臣はA級戦犯とされたか
(5) 陸軍と海軍では〈A級戦犯〉とされた人数が大きく違った
(6) 〈5対5対3〉の艦船比率をめぐる問題
(7) 百発百中の砲一門は,百発一中の砲百門に対抗し得るか
(8) 二・二六事件での陸軍と海軍
(9) 中国侵略開始ごろに海軍省にそろった反戦派将校たち
(10) ヒットラー『わが闘争』の読み方の違い
(11) 1941年1月に提出された「新軍備計画論」
(12) 真珠湾攻撃は成功したが
(13) 海軍兵学校の校長としての井上成美の仕事
私は今戦争中の歴史を中学生に教えているが,
この論文のような視点では授業できていない。
特に当時の天皇や国民が
どのように戦争に関わっていたかは
大変デリケートな問題でもあり,
「教えにくい部分」を多く含むからである。
しかし,井上成美という反戦派の軍人が
存在したことを知るにつけ,
そういう生き方もできるのだという選択肢を
生徒たちにも伝えたくなってきた。
この論文は途中に2つの[問題]もはさまれており,
将来的に授業書として使えるのではないかと
私は思っている。
最近のコメント